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母とおうちですごそう

昨年の夏頃から母親の調子がおかしい。持病だった鬱がどんどんひどくなり始めたのだ。

 

 

僕が年少の頃まで母は会社員としてバリバリ働いていた。しかし、慣れない日本*1で2人の息子を育てながら家事と仕事を両立するのはキツかったらしく、鬱になり仕事をやめた。

それからはずっと専業主婦として家事を全部やってくれていた。会社を辞めてからは鬱も随分良くなり、みんなすっかり安心していた。

 

  

ところが今年の夏、急に悪くなってきた。とっさに発狂したり、ものを投げたり、うずくまって泣き出したりするようになった。

 

 

この理由は、おそらく、生きる目的を失ってしまったことである。

母は会社を辞めてからこれまで、異国の地である日本において息子2人を立派に育て上げることだけが生きる目的だったそうだ。

僕も兄も大学院生。僕は来年から就職で家を出る。兄は博士課程なのでしばらく学生だが、大学の近くに下宿しようと計画していた。僕はその前の秋に母にカミングアウトした。兄も彼女ができたことを打ち明けたらしい。

 

 

これらのことが重なって、自分の子育てはもう終わり、すなわち、自分の生きる意味はもうないと思ってしまったのであろう。

さらにこのストレスが原因か胃腸が悪くなり、ご飯があまり食べられなくなって、体重が10kgも落ち痩せ細ってしまった。

 

 

先月末、母は寝転がっていたソファから落ち、脚を折ってしまった。普通ならそんな落ち方はしないが、筋肉が衰えていたため起こってしまったらしい。

こうして1ヶ月の松葉杖生活がスタートした。

 

 

ただでさえ精神がやられて生きる意味を見失っている母が、体まで不自由になってしまった。家事は僕と父がやるようになった。家事をすることで生きてきた母に、さらに追い討ちをかけてしまっているのが辛かった。

ひとまず松葉杖が取れるまで、家事と母の精神のサポートに家に一人はいないといけない。父は仕事、僕は就活と普通ならそれが難しいが、幸か不幸か、例の感染症のせいで就活が在宅で済んでしまう状況になっている。

 

 

そんなわけで、最近は家で家事と母のサポートをしながら就活を進めている。暇なときは二人で映画やドラマを見ている。「翔んで埼玉」、「ぶどうのなみだ」、「時計仕掛けのオレンジ」、そして今日は「電車男」を見た。本当に、とても幸せな時間が流れている。「コロナありがとう」なんて言えないが、コロナが家族と過ごす時間の大切さを教えてくれている気がする。

 

 

母とこの家で、この街で過ごすのもあと1年。今年、街の名物の桜を母と見ることができないのは寂しいが、来年こそ自分が家を出る時には一緒に花見をしたい。

それが母にとっても、ひとまずの生きる目的になってくれたらと思う。

 

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地元の名物の桜並木


 

*1:母は中国生まれ